「えっ!?誕生日?8月21日だけど‥。」


「8月21日ね。了解。じゃあ、また部活の時にね。」


それだけ聞くと本当に行ってしまった。


私の頭には?しか残らなかった。







ある日のことだった。




「久川さんてさ、圭太に気があるの?」



部室で着替えている時だった。星野葵さんが話しかけてきた。運が悪いことに部室には私と葵さんしかいない。


「ううん。全くないよ。」



私がそう言うと‥



「よかったー。久川さんと圭太て釣り合わないと思うんだよね。やっぱ、私と圭太がお似合いだよ。じゃあさ、」


そう言うなり、私に顔を近づけて言った。



「圭太に近づかないでくれる?圭太の側には私、一人で十分なの。それに‥地味なあんたに、この私が負けるわけないしね。」




ズキッ 心が痛む。



地味だって‥そんなの、わかってる‥



「う‥うん。わかった‥。」



「聞き分けのいい子で助かるよ!さすが看護学部!頭だけでなく、察しもいいのね!」


そう言って葵さんは私に抱きついた。


葵さんからは甘い匂いがした。






そんな日に限って怪我をする人が現れるものだ。


「久川!怪我したから手当てしてください!」


子犬のようにやってくる圭太くん。


いつもだったらするんだけど‥私の視線の先には‥睨んでいる葵さんが‥。


「ご‥ごめん。私、今手が離せないから別の人にやってもらって。」


「えー。今、手あいてるじゃん。」


「‥っ‥これでも、忙しいの!ほら、消毒液と絆創膏!自分でやって!」


私は絆創膏と消毒液を渡して圭太くんの側を離れた。


「なんだよーケチ。」


そんな声も聞こえたが無視することにした。



だけど‥心の中がもやもやする‥。







パコン!


コート内に心地よい音がなる。


私はダブルスで試合をしていた。


相手は星野葵ペアだ。


やっぱり、向こうの方が強い。強いからこそ負けたくない気持ちもある。


そんなときに葵さんが放った痛烈なサーブが私の方にめがけてとんできた。



ガツン!!!



「歩保!!?大丈夫!?」


私のペアの巴が駆け寄ってきた。



ボールは私の頬に当たって、転がっている。


「だ‥大丈夫‥。たいしたことない‥。」



すると‥




「久川さん、ごめんねー。まさか、顔に当てるなんて思わなかったよ。でも、ナイスレシーブ。」


葵さんはバカにしたように言う。


「ちょっと葵!!!ご‥ごめんね歩保ちゃん、大丈夫?」




「大丈夫です。試合続けましょう。」



「本当に大丈夫なの?ちょっと休んだ方が‥」


「大丈夫。このぐらい平気だから。」


私は顔についた泥を払いながら言う。


むしろ、今のプレーで火がついたぐらいだ。


絶対に勝ってやる。あんな人に負けたくない。