「おーい!圭太がまた怪我したって!誰か手当てしてやれよ!」


誰かがそう言うと周囲は、またかという雰囲気になった。


そう、圭太はよく転んだりして擦り傷程度の怪我をよくする。



私は看護学部にいることもあって、常に消毒は絆創膏を持っていた。



「おーい、誰かー絆創膏ちょうだーい!」



圭太くんがひょこひょことやって来た。


私は腰にさげていたかばんから、消毒と絆創膏を出そうとした。


「圭太、星野に手当てしてもらえよ。」


その言葉を聞いて私の手が止まった。


「そうだよ。えーっと星野は‥あれ?さっきまで、いたんだけど‥。」


「別にあいつじゃなくてもいいよ。じゃあ、まさに絆創膏を出そうとしてる久川さん!」


急に圭太は私に話をふってきた。


「は‥はい!」



すると私と圭太は目があった。


「絆創膏ちょうだい。」


圭太は笑顔で手を差し出してきた。


「ま‥待って。その前に消毒だよ。」


「別に大丈夫だよ。こんなのつばつけたら直るって。」


「‥っ‥だ‥駄目だよ!!ばい菌入ったらどうするの!?ちょっと来て!」



私は思わず圭太くんの手をつかんで連れていった。


後からは冷やかす声が‥



「お‥おい、久川!?」



圭太くんの声も聞こえるが私は無視することにし、コート脇のベンチに圭太くんを座らせる。



「足、出して。」



「は‥はい!」


なぜか、圭太くんがかしこまる。


私は擦りむいた膝に消毒液をかける。



「‥っ‥しみるー。」



圭太くんが体をよじっている。よっぽど染みるのだろう。



「ちょっと痛いけど、我慢して。これぐらいしないとばい菌が入るのよ。擦り傷だからてなめてると痛い目に合うよ?」



「‥久川てさ、怪我のことになると容赦ねぇよな。」


「えっ!?」


思わず圭太くんの顔を見るとまた目があった。

その顔は笑っていた。



「前から久川の手当ては完璧だけど、ものすごく鬼畜だって。あの話本当だったんだな。」



「えぇ!?私てそんなに鬼畜なの!?そんなにきついこと言ったかな?」



私には、きついことを言った記憶がほとんどない。


「さすが、看護学部。手当てばっちりだな。よーし、今日から俺の手当て担当は久川歩保に決定だ。」


「えっ!?ちょっ‥ちょっと待って!!手当て担当て何よそれ!そんな急に言わないでよ!私はみんなの担当なんだから!」



「久川。異論は認めないからな☆」


そう言って笑顔で、みんなの元に戻ってしまった。