3月 25歳


「須永英莉紗さん!好きです!付き合って下さい!」


職場の休憩室に呼ばれ、二人だけの空間で私は告白された。


それに、私の答えはいつも決まってる。


「ごめん。あんたのこと好きでも何でもないから。だから付き合えません。」


私に告白してくる者がいれば私は容赦なく断る。


そうすれば、男はたいがい落ち込んで帰っていく。


だが‥


「‥て言われるでしょうと思ってました。」


そう言って笑顔を見せてくる例外な奴がいる。


(‥こいつ‥。)


私は心の中で毒づく。


私の目の前にいるのは、私よりも1つ年上の営業部に所属する‥確か‥佐渡翼(さわたり つばさ)(26)だったと思う。


「須永さんはうちの会社でも、有名なんですよ?男性をきつい言葉でふるって。」


なおも笑顔で伝える佐渡に少しイラッと来る。


「‥それを分かってて、私に告白するなんていい度胸してますね。感心いたします。それにしても、あなたはドMですか?」


「‥フッ、まさか。いたぶられたいがために、わざわざ告白なんてしませんよ。」


「じゃあ、なんのためですか?何かの罰ゲームですか?だったら、こんなくだらないことしない方がいいですよ。」


私は早く怒って行ってしまうことを祈りながら言う。


「そんなの、決まってるじゃないですか。それは‥須永英莉紗さんのことが本当に好きだからです。」


「‥‥っ!」



(本当に英莉紗のことが好きだ!)


私の頭に過去の記憶が流れる。



「須永さんが入社したときから一途に思い続けていました!この気持ちに嘘はありません!」


「‥それ‥本当?」


私はそういいながら、佐渡翼に詰め寄る。


「は‥はい!本当です!」


佐渡翼もじりじりと私の勢いにおされ後ろに下がっていく。


「‥へぇー。そうなんだ‥。全然、知らなかったよー。」


この時、私の目は笑ってなかっただろう。


自分でも分かってる。


「あ‥あの‥須永さん‥」


佐渡翼を壁際に追いる。


「じゃあさ‥」


ドン!


私は佐渡翼に壁ドンをしてやった。


男にとって、女子からされるなんてこんな屈辱的なことはないだろう。


「そこまで本気なら、こんなに男に興味がない私を振り返らせてみてよ。」



「‥‥‥。」



佐渡翼が何も言わずに私の目を真っ直ぐに見ていた。