一成の言葉で俺は本気で戦うことに決めた。
一成はチームのエースだけあって球も速いし、コントロールもいい。
だから、打つのが困難だ。
さっきから打とうと振ってるが中々飛んでくれず、気がつけばフルカウントになっていた。
「さぁ、次が最後ですね。一成、行っとくけどボールだったら俺らの勝ちね。」
そして、一成の手からボールが放たれた。
(カ‥カーブ!?)
カキーン!
打った瞬間、快音が響きみんなが打球の行方を見る。
ボールはセンターへと落ちて行った。
「よっしゃー!勝ったぞー!」
坂井達が喜ぶ。
一成はというと立ち尽くしていた。
「じゃあ、約束は約束な。一成にはやめ‥」
「ちょっと、待てよ。」
俺はそこで坂井の言葉をさえぎった。
「打席に入って、勝ったのはこの俺だ。一成には俺の言うことを聞いてもらう。」
「お前、話が違うじゃねぇか!!」
坂井が詰め寄るが‥
「だったら、お前もあいつの球を打ってみろよ。打てるもんなら。」
俺はそう言うと一成に向き直った。
「男に二言はないよな?一成?」
「約束は約束だからな。好きに言えよ‥。やめてほしいならやめるから。」
諦めたように一成は言う。
「‥じゃあ、今から言うことよく聞いて。1回しか言わない。」
ここで俺は間をおいた。
そして‥
「俺を甲子園に連れていって。」
「‥‥は?」
一成の口からは間抜けな返事が返ってきた。
「‥絢人、お前何言ってんだよ‥。」
坂井ですらも理解出来ていなさそうだった。
「俺は1回しか言わないてさっき言ったよ。」
「絢人‥。俺‥本当に意味が分かんない。」
一成は混乱しているようだ。
すると‥
「俺たちが甲子園とか、本気で言ってるの?おめでたい頭だね。この際だから、思ってること全部言ってやる。」
そう言うなり、坂井は一成の胸ぐらをつかんで言った。
「俺たちが、どれだけ頑張ってもこんな弱小校が甲子園になんて行けるわけないんだよ!!お前がどれだけ怒鳴ったとしても行けないものは行けないんだよ!!」

