夏の大会の抽選会が間近に控えた日だった。
次の日、俺は重い足取りで学校に向かった。
この時ほど、一成と同じクラスじゃなくてよかったと思ったことはない。
昨日、ひどいことを言ったということは自分にも自覚があった。
それだけに気が重たくて仕方なかった。
キャプテン失格だ!て言った奴がどんな顔をして会ったらいい。
そんなの分かんないよ‥。
教室に行くと野球部のメンバーが集まっていた。一成はいなかったけど。
悪口を言ってた坂井が俺に声をかける。
「よぉ絢人!昨日、キャプテンどうだった?へこんでたろう?」
「‥う‥うん。」
俺は席に荷物を置きながら言う。
「よしっ!俺たちを見くびるからそうなるんだよ。ざまぁみろ!」
「‥で今日はどうするよ?」
「そうだなー。今日は行くか。面倒だけど。」
俺はなぜか腹が立ってきた。
聞かないようにしていたけど我慢が出来なかった。
「‥お前らさ、一成のことなんでそんなに悪く言えるわけ?」
自分でもびっくりするぐらいの低い声だった。
「は?」
「一成は、嫌いな奴だから言うんじゃない。直した方がいいから言うんだよ。坂井は一成のこと悪く言ってるけど、少しでも直そうて思った?坂井は一成の意見に反発してるだけ。言いたいことがあるなら一成に直接言ったらどうなの?」
すると坂井が俺の胸ぐらをつかんだ。
「聞いていれば、好き放題言いやがって!お前はあいつの回し者か!?それとも俺たちの敵か!?」
「ち‥ちが‥」
息苦しさで言葉に出来ない。
「お前ちょっと来い!」
そう言うなり、坂井は俺の腕を掴むと隣のクラスに向かった。
クラスに入ると一成はすでに来ていて、教科書を読んでいた。
「おい、一成。」
その声に一成が振り向くと、目がまんまるになった。
「今日の昼休みグラウンドに来い。さもなければ、絢人がどうなっても知らない。」
「‥っ‥お前、絢人に何するつもりだ!?」
一成が顔色を変えて立ち上がる。
「絢人が大事なら、今日の昼休み必ず来い。お互い、勝負して腹割って話そうよ。」
「勝負?」
「1打席勝負だ。ピッチャーは一成。バッターは絢人。ヒット打ったら勝ちだ。俺らが勝ったら一成には言うことを聞いてもらう。もし、俺らが負けたらお前が正しかったと思って真面目に練習に参加するよ。」