「一成‥。」


「だから絢人は俺の悪口ぐらい聞き流せ。俺は、絢人が悪口を言ってないて分かってるしな。俺は悪口言われても平気だから。」



そう言うと一成は笑った。


それは少し無理しているようにも見えた。



「一成‥だからさ‥」


そう言った時‥



「お‥お兄ちゃん、お金全部、使い果たしちゃった‥。お腹減ったし‥帰ろう‥。」



こいつはどこまで自由なんだ。と言いそうになったが‥



「じゃあ、絢人。また学校でな。気をつけて帰れよ。」



そう言うと一成は打席へと戻っていった。


俺の心は複雑だった。












一成は‥気にするなて言った。



だけど、友達の悪口を言われるのは聞いていて良いもんじゃない。



だけど‥俺には止める勇気もないよ。







「ちゃんと走れよ!!!試合だと思って走れ!!」



今日もグラウンドには一成の声が響く。



「‥っ‥本当にうぜー。」



また、あの悪口が聞こえる。



この声が一成に聞こえてるのかどうかも分かんない。













そんな6月中旬。3年生、8人いるうちの6人が休むという事態が発生した。



グラウンドに行くと1、2年生はいるのに3年生は俺と一成しかいなかった。



「ど‥どういうこと?他のみんなは?」



「具合が悪いからみんな休むって。」


「えっ?みんな?みんな、体調が悪い?」



「そう。じゃあ、練習始めようか。」


普通にいつものメニューをしようとするので俺は慌てて止める。



「ちょ‥ちょっと、待ってよ!絶対、嘘に決まってるよ!まだ学校にいるはず‥」



「やる気がないやつはほっとけばいいんだよ。やる気がないのに入られても迷惑だし。」


「お前、それでもキャプテンか?キャプテンなら普通、連れ戻すだろう!?なぁ!?」


気がつくと俺は、一成に掴みかかっていた。


「うるさいな!!俺には俺のやり方があるんだよ!!文句あるなら、お前も帰れよ!」


一成は俺から手を離させるが俺も負けじと食らいつく。


「それが、キャプテンの言う言葉か!!そんなだからみんなついていきたがらないんだよ!!それで、キャプテン面してるつもりかもしれないけどお前はただ、俺たちを支配してるだけだ!そんな一成はキャプテン失格だ!!」


そういうと一成は黙りこんだ。


それも‥傷ついた表情をしていた。



「‥っ‥ごめん。俺も帰る。」


俺はその表情にいたたまれなくなり、グラウンドをあとにした。