「……どっち」



振り向くやいなや、声の主は焦ったように話す。



「え?」


「だからどっちが心結のって、悠貴……と小西?」



ヒロの目は悠貴を捉えたようで、その瞬間顔が強ばる。



「……ヒロ」



悠貴もヒロを見て目を見開く。

悠貴の友達はヒロの知り合いでもあって、小西というらしい。



「ひ、ヒロ!部活行ったんじゃなかったの?!」



慌ててヒロの制服の裾を掴む。

そんなことどうでもいいのに。
この場を繕えるならなんだってよかった。



「気になってサボった」


「サボっ……!?」



なにがあっても部活だけはサボらないヒロが部活をサボった!?



「ちょっと織田!邪魔しないでよっ」



かすみがヒロに向かって叫ぶ。


「……そんなん無理だから」



ヒロがあたしの手を引く。



「ちょっと、ヒロ!?」



手を離そうともがくが、ヒロの力にかなうわけがなかった。



「待ってって!ヒロ!」



あたしの言葉なんか聞こえてないのか、そのままズンズンとみんながいる所から遠ざかっていく。