「いやだ、そんなの嫌だ」



あたしのポーチを取り上げる。



「ちょっと、ヒロ。返して」


「そこに行かないって言ったら返す」


「そんなことできないよ。約束してるんだもん。それ以上するなら嫌いになるよ?」



ヒロの目を見つめて言えば、うつむき加減になってポーチを机に置く。



「部活行く……」



肩を落とし気味にカバンと部活道具を持って、歩いていく。



「あいつ、大丈夫?」


「もう、かすみが余計なこと言うから……」



はぁっとため息をつきつつ、メイク道具をポーチから出す。



「いい加減。諦めてもらったほうがいいでしょ」


「そうなんだけどね……」



ヒロになんとなく知られたくないのは、たぶん相手が悠貴だから。
もし、相手が悠貴だと知ったらヒロが傷つくのは目に見えてる。

だったら会うのはやめたらいい話だけど、それができない。
あたしが悠貴に会いたいから。