「うん。見えたよ」


「……そっか」


「俺、彼女と約束あるから。じゃあな」



俺に手を振り、駅にむかおうとする。



「心結に連絡してやれよ」


「は?普通、連絡しろなんて言わないだろ」



悠貴が呆れたような顔になる。



「あいつ、ずっと心に悠貴残ってんだ。ちゃんとケジメつけてやんねーと離れねぇよ」



本当ならもう連絡なんて取ってほしくない。
でも、多分だけど。
心結のことを話す悠貴には、心結への思いが見えた気がしたから。



「心結、番号変わってない?」



一度ため息をついてから聞いてくる。



「うん。悠貴から連絡来るかもしれないからって変えてねぇよ」


「そっか……そのうち電話しとく」



それだけ言うと、俺に背を向けて駅へと入っていった。


悠貴が電話をしたら、終わるかもしれない。

もし、心結がやっぱり悠貴がいいと言うのであれば、引き止めるつもりもない。
俺といると一度言ったからと言って、無理強いするつもりもない。

心結が幸せであればそれでいい。

ただ、もしもと……。
一筋の奇跡を願わずにはいられない。