「お前、あいつにはあれから言い寄られてないのかよ」


「あいつ?」


「ほら、分かれる原因になった……」



ヒロの言葉に脳裏に浮かび上がるひとりの顔。



「唯斗ね……」


「俺みたいに言ってくんの?そういうふうに心結のこころに入り込むのは俺だけでいいんだけど」


「大丈夫。会ってないから」



唯斗とは、悠貴と別れたあとに何度か遊んだりはした。
でも、やっぱりあたしはあの頃のように好きになることはできなくて。

〝やっぱりもう遅いんだな〟って悲しそうな顔をしたのが最後だったかな。

それももう3年前の話だ。
今ではどこで何をしているのかもわからない存在。



「じゃあ、俺で頭いっぱいにしろよ」



あたしの顔をふっと真面目な顔でのぞき込む。



「……っ」



ドキドキしないわけがないってば。



「俺でいっぱいにして、俺のことばかり考えててよ」



唇にヒヤッとした感触が広がる。

別れてから初めてのキスだった。



「予約」



なんて笑ってるヒロにドキドキなんて止まるわけはなかった。