「いらっしゃいませー」



奥で準備をしてると、唯斗の声がきこえる。

お客さんだ!
と、慌ててエプロンをつけて表にへと走る。



「紐、縦になってんぞ」



唯斗がエプロンの紐に触れる。



「あ、慌ててたから」


「そゆとこ変わんねぇな」



目を細めて笑って、結び目を解く。



「あ……ありがとう」



なんだか照れくさくて俯いてる間に、きゅっと結び直してくれる。



ふと、店内に目をやると、お菓子コーナーを見てる男子高生の姿。



「……あ」


「心結?」



あたしの漏れた声が唯斗に聞こえたみたいで、首をかしげてる。



「どした?」



なにも答えないあたしにもう一度問いかける。



「ゆ、悠貴!」



唯斗の言葉をスルーして、お菓子コーナーを見てる背中に呼びかける。



「は?」



唯斗はキョトンとした顔でこっちを見てる。



「はは、気づいてくれた」



大好きな笑顔で振り向く、あたしの大好きな人。