「でも、あたしは柊哉とは何も無かったから。心結みたいに柊哉に振り回されてみたかった」



かすみが空を見上げる。



「何言ってんの!それが柊哉の優しさでしょ?」


「優しさ?」


「今だからいうけど、彼女できたあとかすみと距離置いたじゃない?」


「……うん」



あの頃のことを思い出したのか、辛そうな顔になる。
でも、ちゃんと柊哉の優しさを伝えたかった。



「かすみのこと大事だから、あえて離れたんだよ。傷つけたくなかったの。それなのに唯斗ときたら……彼女できてからだよ?〝俺のことすきだろ?〟なんて。ふざけてるっつーの」



柊哉のことを話してると同時に、唯斗の言葉も思い出して、思わず笑った。



「そうやって、心結が唯斗のこと笑って話せるようになってよかったよ」



かすみが安心したように笑う。



「……かすみ」


「あたしたちって、あの頃の恋があるから今の恋を大切にできてるんだよね」


「そう、だね」



あの頃、たしかに辛かった。
でも、振り回されてたけどそれでも嬉しかった。

その経験があるから、いま悠貴に恋できてる。