「んな顔すんな。友達に戻る努力をするだけ」


そんな顔されたら引けなくなる。
心結に関わらないなんて俺にはやっぱり無理で。



「……そっか」


「これからも俺は心結の味方だから。なんでも言えよ」


「うん。これからもよろくね」



なぜか俺に手を差し出してくる。



「……おう」



心結のその手に自分の手を重ねて握手をする。

前ならこの手が俺のものだったのに、と切なくもなるけど。
諦めると決めた以上は迷わない。


でも、もう少しだけ。
もう少しだけ、心結のことを見ててもいいだろうか。

何かあれば俺がいると思ってくれていい。
都合のいい男でもなんでも構わない。

心結が幸せでいてくれるなら、なんだっていいんだ。

俺は好きな子の涙をみるためじゃない。
笑顔をみるためにここにいる。



「幸せになれよ」



結婚する元カノを見送るような心境で前を歩く心結を見つめた。