「さっきはごめんね。お兄ちゃんがふざけちゃって」


『いいよ。びっくりしたけど』



優しい声がスマホから聞こえる。


──やっぱり、この声が好きだな。



「お兄ちゃん、こういう風にふざけるのが好きで……」



勘違いされないように嘘をつく。
好きなことがばれないように。



『妹に変な虫つかないように見張ってんじゃね?』



ふざけたように言う。



「そんな可愛いことするようなお兄ちゃんじゃないよ」



悠貴と話すと心が軽くなる。



『俺、めっちゃショックだった』



突然真剣な声になる。



「……え?」


『今日のキス、何の意味もないわけないだろ』


「じゃあどういう?」



信じられなくて、聞いてしまう。



『バカか。言わなくてもわかるだろ』



わかんないよ。
いってくれないとわからないよ。


『今近くの公園に来てる、出てこれる?』



あたしの心情を察してか悠貴が聞いてくる。



「え?」


『会いたい、心結に』


「行く!すぐに行く!」



そのまま家を飛びだした。