「はぁっ」



家に帰ってからもあたしの気分は晴れなかった。



「なにさっきからため息ばっかついてんだよ」



テーブルの反対側に座っているお兄ちゃんが、雑誌からひょっこり顔を見せる。



「……うーん」


「なんなんだよ。そういえば、お前悠貴と知り合い?」



「は!?」



お兄ちゃんから出てきた名前に、飲んでいた紅茶を吹き出す。



「汚ぇなぁ」



ティッシュを投げつけてくる。



「ごめん……って、お兄ちゃん悠貴のこと知ってるの?」



ティッシュで周りを拭きながら聞く。



「少年サッカー時代の後輩」



紅茶を飲みながら答える。



「そうなんだ……でもなんでわかったの?」


「ガクがこの前なんか一緒にいるの見かけたって」



この前、悠貴と初めてあったときのはなしだろうか。



「ふーん」


ガクくんは一度だけ会ったことがある。
お兄ちゃんと同じ高校のサッカー部員。

濱 岳治-ハマ ガクジ-


ちなみにうちのお兄ちゃんはサッカーの名門校に通っていて、普段は寮生活。

今日はたまの休みで家に帰ってきている。