「心結、待てよ」


走ったあたしの腕を悠貴がつかむ。


「あ、ごめん……」


「悪かったよ……」


「気に、してないよ」



あたしは笑顔で悠貴を見てから、かすみと小西くんのところへと走る。



〝かわいいから〟じゃなくて〝好きだから〟がよかった。
ほしい言葉はもらえない。

キス、嬉しいはずなのに。
嬉しくない。
こんなに心が冷たくなるキスははじめてだよ。

気にしてないなんて嘘だった。
恋人としてのキスならどれだけ嬉しかったか。


ふと、自分の唇に触れる。

ここにさっき……。
思い出すだけで胸が苦しくなる。

ドキドキが止まらなくなる。
すぐうしろにいる悠貴がどんな表情をしてるのか、気になって仕方ない。

──ねぇ、どうして。
キスなんてしたの?

もしかしてキスなんて挨拶程度のことなのだろうか。
あたしだけなんだろうか、こんなに気にしてるのは。

知りたいのは、悠貴の心の内。
いつになったら知れるのだろう。