奏でるものは 〜功介〜




カオリちゃんと優たちのところに戻った。

明らかに、泣いていたことが分かるだろうけど、誰も何も言わなかった。



「なんで昌が唯歌の墓を知ってたんだ?」


優が言って、思わず昌を見ると、昌がカオリちゃんを見てから、話し始めた。


「俺、親父の後を継ぐって言ったろ?」

「ああ」

優が応える。


「俺の家、美容院ってだけでなくて、髪結いなんだ。
日本髪を結うし、鬘も結う。
唯歌も歌織も日本舞踊やってて、その関係。
歌織のおばあさんの熊野さんって日本舞踊の家元だからね。

うちで鬘や髪のセットをしてるから、サイタさんの唯歌さんが亡くなったって、聞いたとき、もしかしてって思ったんだ。
個人的な付き合いのある人しか参列出来なかったけど、父さんと一緒にお通夜にもいった。
おばさんと熊野のおばあさんには挨拶したけど、歌織のことは知らなかったよ。

去年の10月の発表会で、雑用係として日舞の大会の会場に行ったら、歌織がいてビックリだったよ。

年始の挨拶も来てくれた」


「そう、昌さんね、手伝いや挨拶の時は、黒髪になってるから、ビックリするよ?」

そんな関係だったのか、と驚いた。

それから、カオリちゃんの日本舞踊の写真を見せてもらった。



唯歌の日本舞踊、見たかったよ。