「ありがとう、珠理。また連絡するよ」
「…はあ、仕方なのない子ね、アンタって」
ふふふ、と、顔を合わせて笑ってしまった。珠理の前で、こんなに素直に笑えるなんて、少しずつ、心を開くことができている証拠かもしれない。
「…なーにを、朝からイチャついてんだよ、まったく」
廊下で珠理の優しさにふれていると、近海くんが窓から顔を覗かせていた。ハッとして周りを見ると、学校に着いたE組みの人たちからジロリと見られていることに気づく。
「…うわ、最悪だ」
こんなことにならないように早めにここから出ようと思っていたのに。これでは意味がないじゃないか。
「何を言ってるの近海。まためごを困らせるようなことしか言わないんだから…」
「あ゛〜〜〜〜〜〜!!!」
…?!
ビク、と、身体が震える。突然大声で叫ばれて、そっと振り向いて見る。
「ちょっとアンタ!!珠理と何イチャついてんのよ!!離れなさいよ!!」
…そこには、メラメラと炎を燃やしている広瀬すずちゃんが…。
うわ、とても面倒くさい奴が来た。ていうか、いちゃついてないし!!「話しながら笑う=イチャつき」とはどういう考え方だ!!
「ハイハイ、わかったから。じゃあ珠理、そういうことでヨロシクね」
「ちょっと桜井芽瑚!!珠理と何話してたのよ、教えなさいよ〜〜!」
「めご!何かあったらちゃんと話しなさいよ!絶対だからね!!!」
…あ〜〜〜〜。もうほんと、朝からうるさい。おかげでクラスメートからの注目のマトじゃないか。
わたしのことはいいから、全くあんたを諦めていない元カノさんを何とかしてください。
…わたしは、この台風のように騒がしい奴らから逃げるように、自分の教室に戻ることにした。



