目の前でわあわあと泣き叫ぶ美少女を見て、思わず抱きしめたくなってしまった。

こんなに泣き顔も可愛い子を、あのオネェはフッたと言うのか。

ずっと好きな人がいたとはいえ、こんなに可愛い子に想われているのであれば、もう付き合ってあげればいいのに…って思ってしまうけど…。


「分かったからもう泣き止みなよ…。てか、なんでわたしのところに来たの…」

「知らないわよ〜〜!いいから慰めなさいよ!!珠理の友達なんでしょう?!」

「それ関係あるかな…」



あぁ、これほどまでに珠理の友達をやめたいと思ったのは初めてかもしれない。



「よおっす〜〜。めごちゃん、って、ええ?!何やってんだよ茶々!」


朝、クラスの前を通りかかった近海くんがビックリした顔をする。

そんな顔をするくらいなら、助けてくれよイケメン…。


「うるさい!近海も珠理の味方ならあたしの敵だからあああああ〜〜」

「はー?!わけわかんね!」



——しばらく、この美少女の泣き声と、イケメンの困り果てた声が廊下中に響いていた。


このカオスな状況に、もう本当に嫌気がさしてくる。

いやいや、わたし、関係なくない?なんでこんなに巻き込まれてんの。この人たちの物語の中でいうと、わたしは通行人A的な役割だよね?


…あのオネェ。なんてことをしてくれたんだ。


「もういい!めご!今日はあたしとビュッフェ食べに付き合って!こうなったらドカ食いしてやるから!!」

「え…ひとりで行って…」

「なんでよ〜〜!いいから来なさいよ!分かったわね?!」


もう、お願いだから。


わたしのこと、まきこまないでください!