「…ねぇ、めご。これからは、もうこんなこと隠さないで。ちゃんとアタシにも話して。ちゃんと聞くから、1人で抱え込まないで」
「…」
夕日も海に沈む頃、珠理はわたしの前髪にふわりと触れて力一杯そう言ってくれた。
…また、黄昏時。この人に助けてもらうのは、いつも黄昏時だ。
「…別れろとか、言わないんだね」
…わたしは、そう言われるのが怖くて、今までずっと隠して来たのに。ヒミツにして来たのに。
「ばかね、言いたいわよ。今だって、あんな男とは別れろって言いたいわ。けど…」
「…」
「……けど、そんなこと言っても、めごがあの人のことものすごく好きなのも分かってる」
珠理は、悔しそうに言った。
でも、その言葉が今のわたしには心地よくて、この人はわたしの気持ちに寄り添ってくれてるって、ものすごく伝わって。
温かくて、また涙が出る。
「…叩かれたんでしょう。口の中、切れてない?」
「…ん、大丈夫。もう止まってるよ」
「病院行かなくていい?」
「必要ないよ」
「……」
初めて、この人の前で笑った気がする。
初めて、リョウちゃん以外の男の人の前で笑った気がする。
…まぁ、この人は男にカウントしていいものなのか謎だけど。
「可愛いわね、アンタ。その笑顔、むやみに他の男の前で出さない方がいいわよ。すぐに変な虫つきそう!」
「つかないよ…!何言ってんの!」
「つくわよう!アンタはもっと自分が可愛いこと自覚した方がいいわ!近海の前でも出しちゃダメよ、わかった?!」
「何必死になってんのよ!」
ほんとバカなオネェ男だなぁ…。