…あの日以来の、私服。
やっぱり、私服は男の人の服装なんだ。美青年だから、何でも似合うけど、こんなのハタから見たら普通にカップルに見えちゃうよね。
…ま、中身はオネェだから、カップルでもなんでもないんだけど。
本当にもったいないよなこの人。
「…ん、まぁまぁ取れたかしら。もう一回流すわね」
「うん…」
…それにしても、どうしてこの人、ここにいるんだろう。
さっきまで友達と仲良く遊んでいたんじゃないの…?
近海くんたちと、どこかに行っていたんじゃないの…?
どうしてこの人は、いつもわたしが落ち込んでいる時にきてくれるの…?
どうして、わたしが呼んでもいないのに、来てくれるの…?
———どうして。
「…めご…?」
名前を呼ばれてハッとした。気がついたら、目からぼたぼたと涙が溢れていた。
「…っ、ごめん…」
あぁ、また泣いてしまったんだ。わたしは、この人の前で。
さっきリョウちゃんにひどいことされた時は一滴も出なかったのに。どうして何ともない今、こんなに出てくるんだろう。
「めご、頰が痛む?口の中、切れてるの?」
「…っ、ちが…」
「スカート、きれいになったわよ。あとはそのケガだけ」
「…っ」
もう、何も言えない。
わたしの痛みをとろうと必死な美濃珠理。
わたしは、そのことで泣いているんじゃないのに、本当に必死。
バカだなあって思うけど、それにもまた、涙が溢れて、何も言えなくなってしまった。



