「お前はいいよなあ!行きたい学校行って、俺のいない環境で新しいオトモダチと毎日のんびり過ごせてんだからよ!」
「…リョウちゃ…」
「お前は今の俺の苦しみなんて分かんねぇだろーが!俺なりに一生懸命やってきたのに、それでも叶わなくて親にも近所にも後ろ指さされながら行きたくもねぇ学校に向かう…そんな気持ちがお前には分かんのかよ…!」
「…っ」
肩をガッチリと掴まれて、食べかけのしらすアイスがスカートの上に落ちた。
べっとりと冷たく濡れていくスカートに、涙が落ちそうになった。
「…リョウちゃ、痛いよ…」
「今日だって、遊びに行くぐらいなら勉強しろって言われて、朝から大げんかしてきたことなんてお前には分かんねぇだろうけどよ…!誰のために今俺はここにいると思ってんだよ…!」
「…っ、ごめ…」
「それなのにこんなこと言われたらたまんねぇよ!」
…こうなったら、もうだめだ。
何やってんだろう、わたし。リョウちゃんがこんなになることくらい、想像できたのに。
1番言われたくないことだって、知っていたのに。
でも、リョウちゃん。それでもわたしは、リョウちゃんはもっと、もっと自分は大丈夫って早く思って欲しかったんだよ。
…なんて、わたしがそんなこと言っても、説得力なんてないよね。
「お前も、ほんっと頭悪りぃ女だよな!俺を怒らせる天才だよお前は…!」
「…っ」
振り上げられた手の後、オレンジ色に染まり始めた空に、バチンと音が響いた。
結構な衝撃で、座っていたコンクリートから転がり落ちそうになる。なんとか掴まって、体勢を整えた。
ジワリと広がっていく痛みに、今まで出そうだった涙はいつのまにか引っ込んでいた。
「…リョウちゃん、やめて…。人がいるから…」
こんなところ見つかったら、リョウちゃんは警察に連れていかれてもおかしくない。
そんなの、絶対したくない。だって、わたしも悪いんだから。



