「ふぅ、疲れた疲れた」
砂浜だと汚れるからと、コンクリートのところに腰を下ろしたわたしたち。たくさん歩いたから、2人ともヘトヘト。
わたしは、少しとけてきたしらすアイスを舐めながら、海を見つめた。
「…なつかしい味だ」
「久しぶりに食ったな、しらすアイス」
「これ作った人、勇者だよね」
陽も、少しずつオレンジ色に傾いてきている気がする。夕日が、ここで見られるといいな。
リョウちゃんと並んで、そんなことを考えていると。
「あれっ?めごちゃん?」
遠くから、そう叫ぶ声がした。
「…?」
「めご」なんて名前、自分で言うのもなんだけど、今までわたし以外、聞いたことも見たこともなかったから、絶対わたしのことだって、思ってしまう。
そして、めごちゃんなんて呼ぶ男性なんて、わたしの周りにはほんの数名しかいないわけで。
「あ、やっぱりめごちゃんだ。なんだ、土曜の予定って、江ノ島だったんだ」
「………オーミくん…」
…右を向いた先には、近海くんと、美濃珠理と、女の人が2人並んでいた。
「偶然だね。俺らもこの辺りで遊んでて」
「…」
…美濃珠理が、わたしをじっと見る。
リョウちゃんのことを、ほんの少しだけ知っている、美濃珠理が。だから、なんだか気が引けてしまって。
「…そ、うだね。ほんと偶然…」
少し、目をそらしてしまった。



