「…んん。あんまり欲張ると大変なことになりそうだわ。向こうで買った方がいいのかしら」
「そうだね。このままじゃ、アメリカに着くまでが一苦労だよ」
「………確かに。その通りね」
珠理はおしゃれさんだから、たくさんの洋服が必要だって思うのかもしれないけど。
アメリカまで行くのだって疲れるのだから、無理はしないでほしい。
それに、向こうの高校は、制服なんてないし。毎日が、私服なんだ。
…その中に、珠理は行くんだ。
「…あんまり、かっこいい服は着なくていいよ」
珠理は、くやしいけどかっこいいから。オネェだけどかっこいいから。向こうに行っても、きっとすごく目立つんだと思う。
…日本でもすごかったけど。
「…あら。なに?心配してるの?」
「別に。向こうは色が白くて綺麗な金髪美女がたくさんいる国だからいいなーって」
「金髪美女って」
…笑った。眩しいくらいの笑顔で。
でも、本当のことだよ。わたしなんかより、綺麗な人はたくさんいる。日本でだってそうだけど、外国の人たちの文化や恋愛の価値観が分からないぶん、少しだけ、ほんの少しだけ、不安になるよ。
珠理のことは、信じてるけど。
「…めご、来なさい」
「…」
向かい合わせで荷物を見つめていたわたしに、珠理の手が伸びてきた。
少しだけ何か意味を含んだような、そんなやさしい言葉に、わたしは吸い込まれるように惹かれていく。
きゅっと握りしめられた手は、そのままやさしく引っ張られて、気がついたら珠理のすぐとなりに座らされていた。



