「…珠理がいなくなると、オジサンもさみしくなるね」
「そーだなあ。ま、1年後には帰ってくるって言ってるし、そう考えるとすぐなんだけどな」
バタン、と、車のドアを勢いよく閉める。曲げていた背中を伸ばしながら、はぁっと大きなため息をついた。
「…確かにしばらくはさみしいけど、しゅーくんが帰ってきたときの居場所はここだからな。だったら俺は、毎日今まで通り、ハニーブロッサムを経営するだけだよ」
「………」
オジサンは、振り返って白い歯を見せた。
小学校高学年から、今まで。ずっと珠理に寄り添って、親代わりの役目を果たしてきた人。
可愛がって育てた甥っ子がとてつもなく遠い地に行ってしまうことは、きっとわたし以上に大きな変化になるんだろうな。
「…んじゃ、ちょっくら買い出しに行ってくる。知り合いのお店にも寄ってくるからって、しゅーくんにも伝えてくれる?」
「うん、わかった。気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとう。んじゃ、行ってきます」
珠理には何も言わずに、運転席に乗り込む。バタンと扉を閉めると、オジサンはそのままエンジンをかけて、お店の外に出て行ってしまった。
…珠理を一緒に待つ人は、瀬名や茶々ちゃんや近海くんだけじゃない。オジサンだってそうだ。
さみしいけど、珠理の帰りを、一緒に待つんだ。
車を見送って、珠理がいる部屋に戻った。相変わらず大きなキャリーバッグの中身を整理している。
うーんと悩みながらものを詰めている珠理に、背中から話しかけた。
「珠理、オジサンが買い出しに行ってくるって。知り合いのお店にも寄ってくるから、ちょっと時間かかるって」
わたしの声に反応して、ようやく振り返った珠理は、「わかったわ」と、笑っていた。
「…荷物、まとまる?」
洋服や、小物を詰めている珠理の横に座って、その様子をうかがう。
あまり送る荷物をたくさんにすると、お金がかかってしまうからって、洋服をキャリーバッグの中に詰め込んでいるらしい。
これから使うであろう夏服が、何枚も重なっている。



