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珠理がアメリカに発つ2日前には、珠理の部屋はすっかり片付いていた。
高校で使っていた教科書やノートも全てダンボールに詰められて、一足先に現地の方に送られていた。9月までの半年間、大学受験の勉強をするためなんだって。
ついでに、日本の本屋さんで、高校3年生用の参考書も購入していた。日本の大学受験に出来るだけ沿えるように、らしい。
珠理は頭がいいから、参考書を読めばある程度は理解ができるって言っていた。そういうところはさすがだと思う。本当にオールマイティのオネェだ。
「珠理、これ全部、オジサンの車に乗っけちゃっていいの?」
…そして、今わたしは、春休みに入ったから、珠理の飛び立つ最終準備を手伝っている。
「そうね。それは空港に運ぶものだから、車で大丈夫よ」
「はーい」
珠理が、最低限の荷物をキャリーバッグに詰め込んでいる間に、わたしはもう1つのリュックを車に運ぶ。
トントンと階段を降りて外に出る。駐車場に向かうと、そこには車の中を綺麗にしているオジサンの姿が見えた。
「オジサン、珠理がこれももう、運んで良いって」
背を屈めて、ゴソゴソと物を動かしている後ろ姿に話しかけると、オジサンはすぐに気づいて「おお」と、笑いかけてくれた。
「ごめんねぇ、めごちゃん。最後の最後まで、面倒見てもらって」
困ったように眉毛を下げながら笑う。でもその顔は、どこかさみしそうだ。
「いいよ。わたしも家で1人だとそわそわしちゃうし。こうしてる方がいいんです」
「ははは、なるほどね」
わたしが持っていたリュックに手を伸ばして、それを受け取ると、そのまま車の奥に詰めていく。
綺麗になった車に、珠理の荷物が乗せられている。
…それを見ると、本当に明後日には出発してしまうんだと、実感する。
「もう、あとは明日持ってくるキャリーバッグだけかな?ほかにないんだったら、俺、ちょっと買い出しに出てきたいんだけど」
「買い出し?」
「そうそう。珠理がいなくなるって言ってもなあ、店を何日も閉めるわけにもいかないからね」
「…そっかあ」
オジサンは、珠理の準備のために度々お店を閉めていた。
色々な手続きで走り回っていたから、少しだけ落ち着いた今は、ほぼ通常通り、お店を運営している。



