「…のんびりしてていいから、好きに座っててよ」
…本当は、うちじゃなくても良かったのかもしれないけど。今は、冬でとても冷えるから。
こうやって暖かいほうが、いいよね。
ヒーターの前に、珠理が座る。だからわたしも、その隣に座った。
足が冷え切って、暖かい空気に当たるとジンとする。指先も、まだ思うように動かない。
「…ごめんね、急にこんなとこ連れてきて」
「んーん、めごの家族、面白いから見てて楽しいわ」
「…そっか」
…“ 家族 ” 。
珠理が、その言葉を出すだけで、なんだか心に引っかかって気になってしまう。
“ アメリカに行くこと、迷ってるよ ”
「…」
近海くんが言っていた言葉が、やっぱりどうしても抜けない。今は何気なく隣にいるこの人が、なにを考えているのか。
…今のわたしには、想像することができない。でも、近海くんには、何か感じるものがあるんだよね。
隣で、足を抱え込んで座っている珠理に、少しだけ寄りかかった。右側の表面だけに珠理の温度が広がる。
目を閉じて、ただ、その温かさだけを感じていたかった。
珠理がここにいるって、ちゃんと確かめたかった。
「……ねぇ、めご」
珠理はまだちゃんと、わたしの隣にいるって。
「…めご、聞いてほしいことがあるの」
そう思うことによって、少しずつ少しずつ、覚悟を固めようと思っていた。
「サユリのこと、話したい」
…でもまだ、早かったよ、珠理。



