「…ごめん。待ってられなくて、来ちゃった。珠理の荷物も、持ってきたよ」
「え?あぁ、ありがと。ごめんね、遅かった?」
「…ううん、そーいうんじゃなくって」
…そういうわけじゃない。違うよ、珠理。
でも、近海くんから聞いたことは、とても言えない。
わたしは、待ってるって決めたんだから。
「…ねぇ、珠理」
「うん?」
「今日、わたしの家に寄っていかない?うちのお母さんも、遊びに来てって言ってたでしょ。だから、来て。夕飯も食べて行って」
「え、ええ!?今日これから!?約束もしないで行ったら、慌てちゃうんじゃない?」
「大丈夫だから!」
必死なわたしに、すごく驚いた顔をしていた珠理。
そうだよね、びっくりしちゃうよね。突然こんなことを言い出すのだから。
…わたし、何を必死になっているんだろう。
「…ごめん。お母さんには、これから聞くから…」
「ん、わかった」
自分が、どうしてこんな行動に出たのかなんて。どうして、突然うちに呼びたくなったのかなんて、理由はよく分からなかった。
だけど、近海くんの言葉が、やっぱり最後まで消えることはなかったんだ。
“…遠くに行くかもしれないよ?”
…だから、無意識に不安になっていたのかもしれない。
珠理と、離れるのかもしれないってことに。
「…お母さんから返信来た。今から連れてきても大丈夫って」
「ほんと!?じゃあお邪魔しちゃうわ〜!」
珠理は、いつも通りだ。
だけど、わたしはちゃんと、いざという時のために心積もりしなきゃ。
ちゃんと、珠理の答えを聞いても、笑っていられるように。



