「第一、まだ珠理から聞いてないもん…。きっと珠理なら、言ってくれるはずだから」
「めごちゃん…」
珠理はきっと、言ってくれる。自分から。
わたしに、申し訳なさそうにしながら。もしかしたら、泣きながら教えてくれると思う。
ごめんねって、抱きしめながら、そう言ってくれると思う。
「わたしは、まだ待ってみる。珠理が言ってくれるまで、待つよ」
机の上に準備してある、珠理の鞄をとって立ち上がる。
「ありがとう近海くん。でもね、どんな形になっても、わたしたちなら大丈夫だと思うの…!」
「めごちゃん…」
「それは、ほんとう!本当に、心からそう思ってる…!」
…ねぇ、珠理。
わたしがね、珠理のしたいようにさせてあげたいって思うのは、本当に強がりなんかじゃないんだ。
珠理からは、いつも愛情をもらってるから。
じゅうぶん過ぎるくらい、たくさんたくさん、“ すき ” って気持ちをもらっているから。
わたしたちは、出会ってからも、恋人になってからもそんなに時間は経っていないけれど、でもこれだけは、自信があるんだよ。
わたしたちの、繋がりが強いってことは、胸を張って言えるんだよ。
荷物を全部持ったまま、珠理を探した。職員室に行くと言っていたから、E組から一番の近道を走っていると、向こう側から、珠理が歩いて来ているのが見えた。
「…っ、珠理…!」
こんなに、廊下に自分の声が響くところ、今まで聞いたことがないってくらい、大きな声で珠理を呼ぶ。
でも、なんだか身体がふわふわして、気持ち悪いんだ。走っていないと、大声を出していないと、気持ちが緩んでしまいそうで。
「…めご!?どうしたの、いったい…」
誰もいないことをいいことに、珠理に飛びつく。いつも着ているカーディガンをギュッと握りしめて、すうっと深く息を吸う。
…珠理だ。珠理のにおいだ。
「…めご?ほんとにどうしたの?すごく、うれしいけど」
もう、反射的に撫でられている頭。よしよしと、静かに動く手のひら。
落ち着く。
珠理が近くにいるだけで、安心する。



