ヒミツにふれて、ふれさせて。



…珠理が、アメリカに行こうか、迷ってる…?


「俺は、ずっと小さい頃からアイツのこと見てきた。だから分かるよ。このままだったら、もしかしたらアメリカに行っちゃうかもしれない」

「…え」

「行くんだって、ハッキリとは言わないよ。だけど、アイツは1年の頃から行きたい大学は決まってた。夏の進路にだってそう書いてた。だけど、今は迷ってる。それがどういうことなのか、めごちゃんは分かる?」

「——…」



——“ 惑わされないで。俺のそばにいて。”



…そう言っていたのは、珠理だ。

行かないって言ってた。何度来ても、気持ちは変わらないって。わたしを1人にしたくないから、アメリカに行くのは無理だって。


「…めごちゃん。止めるなら今だよ。アイツはまだ行くってハッキリ決めたわけじゃない。けど、本当に迷っていると思う」

「……」

「珠理が、遠くに行くかもしれないんだよ」

「…!」





………珠理が、本当にそう思っているのだとしたら。

サユリさんとの話の中で、何か考え直すことがあったのだろうか。
それとも、オジサンとの話で、そう思ったのだろうか。

…わたしだって、胸を打たれた話をされた。オジサンからあの話を聞いたから、わたしは珠理のしたいようにしてあげたいって思った。

そんな想いを持って、冬休みを過ごして来た。

でも、珠理からは何も言われていないから、そんな想いはしなくていいのかもしれないとさえ、思っていた。


…だけど、もしかしたら、そうじゃないかもしれないの…?



「…俺は、これはアイツとサユリさんの問題だから、首を突っ込むつもりはないよ。でも、そんなに簡単な話じゃない。だから、もしめごちゃんが我慢しなきゃいけないと思っているなら、それは考え直した方がいい」

「——…」

「めごちゃん。止められるのは、めごちゃんだけだよ」



…わたしが、珠理を止める?


もし、本当に珠理がサユリさんと住むことを選ぼうとしているのだとしたら。それを、わたしが止めるの?わたしが行くなって言ったら、珠理は行かないの?

…そしたら、わたしは珠理と日本で、ずっと一緒にいられるの?

大学生になっても、今みたいに、ずっと近くにいられる?珠理のそばにいられる?


…そんなの。




「———…そんなこと、言えない」




言えない。言えるわけないよ。

“ 行かないで ” なんて言ったら、珠理はきっとわたしのそばにいるでしょう?

めごのためならって、言うでしょう?


自分の気持ちを、押し殺してまでも、きっとわたしと一緒にいようとするんだ。



…わたしが、「行かないで」のたった5文字を言うだけで、珠理の人生は変わる。


そんなこと、できるわけないよ。