「…まぁいいや。アタシも適当に国立大を書いて提出しちゃおっと」
「…」
珠理は、黙っている近海くんの前で、流れるようにわたしと同じ大学名を書いた。第3希望まで、聞いたことある有名な大学が並んでいる。
「よっし書けた!もうこうなったら書いたもん勝ちよね!ちょっと職員室に提出してくるわね〜!」
シャープペンシルを置いて、勢いよく教室から飛び出していく珠理。その後ろ姿を見送ると、教室に2人、近海くんと取り残される。
「…はは、ほんと、肝心なとこ不真面目だよね、珠理って」
「…」
さっきから、異様な空気を出している近海くん。そんな彼と2人きりなんて、気まずいにもほどがあるよ。前に2人になった時は、こんなこと感じなかったのに。
…窓の向こうで、部活動生の声が響いている。まだ5時なのに、真っ暗になっている空。もう、夜みたいだ。
しんと静まって、冷たい空気に包まれている教室。そんな中に、ようやく近海くんの声が響いた。
「…めごちゃん、いいの?」
「え?」
…じんと、響く声。いつも珠理のことを怒っている声とは違う。だけど、少しだけこわい声。
わたしの方を見つめている目が、今までには見たことのないくらい、まっすぐで。
「……いいの? アイツ、迷ってるよ」
「……」
「…アメリカに行こうか、サユリさんと一緒に住もうか、迷ってるよ」
——飲み込まれて、しまいそう。



