ヒミツにふれて、ふれさせて。






その日の放課後、わたしは珠理の教室へ向かった。お昼は瀬名たちがいたから、ちゃんと聞けなかったし。近海くんが話題には出していたけど、珠理は自分のことを話すこともなかった。

だから、少しだけ、珠理の考えが聴きたくなって、教室を飛び出した。


E組に着くと、珠理は椅子に座っていた。近海くんもいて、2人で何やら話している。



「…、珠理」

気になって呼ぶと、珠理はすぐに気づいてくれて、やさしく手招きをしてくれた。


「ごめんね、めご。これからお迎え行こうかた思ってたんだけど」

「ううん、大丈夫。それより何して…」


近海くんが準備してくれた椅子に腰掛けると、珠理の机の上には、朝に配られた小さな紙が置かれていた。

それが目に入った途端に、どきんと心臓が跳ねる。


「…珠理、」

「難しいわよねぇ。アタシ、近海と違って何も考えずに生きてきたから、なかなか書けなくって。まだ提出できなくて困ってるの」

「…」


真っ白な進路調査表。男の子らしい字で、名前だけは書かれてある。


「…めごは、書いた?」

「あ…、うん」

「そっか。国立大?」

「うん…。できればね」

「そう」


わたしだって、そんなに目的があるわけじゃない。だから、適当に一番近くの国立大を第一希望に書いた。受かるかどうかは、別として。


「…ねぇ、めご」

「ん?」

「アタシね、近海に話しちゃった。この間のこと」

「…」


…え?

この間のことって、もしかして、サユリさんのこと…?


何も言えずに、ふと近海くんの方を見ると、彼はなにかを考えたように、じっと進路調査表を睨んでいた。


「…サユリ、アメリカに行ってからもずっと定期的に電話してきてて。それを近海に聞かれちゃったから、もういいやと思っちゃって」

「…」


えへへ、と、あっけらかんと笑う珠理。その隣で真面目な顔をしている近海くんとは真逆の空気だ。


…てか、電話が来てるって。やっぱり、そうだったんだ。