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お店番をする時間になった頃には、珠理はいつもの調子に戻っていた。
「いらっしゃいませ。クリスマスケーキですね。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
…初めて、珠理が店番をしているところを、一番近いカフェの席に座って見ている。
サラサラと出てくる店員さんならではの口調。テキパキと会計を済ませる姿。
いつもの珠理じゃないみたいだ。
「…珠理、別人みたいでしょ」
ぼーっと、初めて見る姿に見惚れていると、ガタンとテーブルが動いた。
「…!オジサン」
「ふふ、俺はちょっくら、休憩」
向かい側の椅子に座って、湯気を立たせたコーヒーを飲む。
さっき、サユリさんと4人で話したっきりだ。…なんとなく、気まずいなあ。
「…しゅーくんがあそこに立つとね、やっぱり他のケーキも売れ行きが良くなるんだよね。我が甥っ子ながら、人間離れした美男子だと思うよ」
「ははは…、そうですね」
「…あれ、めごちゃん、妬かないの?」
「妬きませんよ。学校でもそうだから、今さらそんなこと思わない」
女の子の目がハートマークになっているところなんて、もう見飽きるほど見てきた。今さら嫉妬なんて、する方が馬鹿げてるというか。
そんなことに、体力使っていられないというか。
「ははは、図太いなあ、めごちゃんは。でもまぁ、しゅーくんが恋人なら、そのくらいの方がちょうどいいのかもしれないね」
「…」
…図太い、かなあ。ミーハーな女の子たちに対してはそんな感情持ったりはしないけど。この間は珠理のクラスメートに触られてるの見て、モヤっとしたりもしたし。
告白されたりしてるのも、そんなに良い思いをしたわけじゃないんだけどな。
それでも、珠理がわたしのことを好きだと言ってくれるから、不安にさせないでいてくれるから、わたしは平気なだけ。
…そんなに、できた女の子じゃない。



