バタンと、部屋のドアを閉める音が響く。
いつもより荒々しい閉め方。こんなことをする珠理は、今まで見たことがない。
「……、珠理」
「…」
いつのまにか離れていた手。目の前にある、大きな背中に話しかける。立ったまま、じっと動かないそれは、まるで珠理ではないように見えて。
…手を、伸ばすこともできない。
前に珠理の部屋に来た時は、この人の全部を受け止めるって決めたのに。
「……ごめん」
冷たい扉に手を這わせて、自分の足元を見てじっと待っていると、その大きな背中から声が聞こえた。
それにハッとして、目線を上に上げる。
すると、目線の先には、やさしく笑った珠理がいた。
「ごめんね、めご。せっかくの日なのに、こんなことになっちゃって」
「……」
伸びてくる腕。それに静かに従うと、そのままギュッと抱きしめられた。
…やさしい。さっきまでの、少し強引な手とは違う。いつもの、珠理だ。
「…何も、心配することはないわよ。あの人はいつもあぁなの」
「…」
「アンタを1人になんかしないわ。めご以上に大切な人なんていないもの。だから、本当に気にしないで」
…やさしい声。
こんな時にも珠理は、こうやってわたしを安心させてくれる。
「ちゃんとここにいるから」って。「心配しなくていいんだよ」って。
それは、きっと珠理の本心なんだろう。嘘なんかついてるわけじゃない。
…でも。



