…でも、それは本当に、珠理の本心?
「…分かった。じゃあ今回は諦める。また何度だってくるから、しゅーくん、その時は…」
「何度来たって同じよ」
「…」
珠理の、低い声が響いた。厳しくて、かたい声。同時に、わたしを抱き寄せる力も強くなる。
「…もう、ここにはちゃんと、俺の生活があるんだよ。色々なことがあってサユリと離れて。でも、オジサンが俺を引き取ってくれて、めごや近海に支えられて、めごとやっとこういう形になれて。
…それで、今の俺があるんだ」
「…っ」
「……毎年、会いに来てくれて嬉しかったよ。俺だってサユリのことは大切だし、ちゃんと母親だって想ってる。
でも、急にそんなことを言われても、一緒についていくなんて、無理だよ……」
つよくてかたい声が、少しだけ震えに変わった。
珠理とくっ付いているから分かる。珠理の胸が震えてる。ぎゅっと握りしめられた手が、カタカタと、小刻みに揺れている。
…珠理が、くるしそうに話しているのが、分かる。
「——今日はもう、この話は終わり。めごと楽しくクリスマスを過ごしてたんだから。邪魔しないで」
「…っ、しゅーくん…!」
思いっきり、腕を引っ張られた。
これ以上ない力で、ぎゅっと手を握りしめられて、そのままわたしたちは、さっきまで2人でいた場所に戻っていく。
遠退いていく声。
サユリさんは、最後まで何か言っていたけれど、ドアを閉める音と、珠理が階段を踏んで歩く音で、その声はかき消されていった。
「…、しゅり…」
「…」
……部屋に戻るまでの間、珠理がわたしの方を見ることは、なかった。



