「…サユリはさ、意地悪よね」
「しゅーく…」
「めごがいる時を狙って、そーいう話を持ち出してくるんだもの」
「…!」
グッと、後頭部を覆われて、そのまま珠理の胸に押し当てられる。
…珠理のにおい。少しだけ、ホッとする。
「…今は、めごが大事なの。アタシのことを全部知って、それでもアタシの隣にいてくれてる。サユリのことも知って、こうやって会いに来てくれてるのよ。アタシは、この子と離れる気はないわ」
「…っ」
仮にも、珠理のお母さんと叔父さんの前でこんなことをされているなんて、普段だったら恥ずかしくて怒っている。
だけど、今はこの状況で、そう言ってくれることが嬉しかった。ちゃんと、わたしも輪に入れてくれることが、嬉しかった。
…頭の上で響いている珠理の声が、心地よかった。
「…うん、分かってる。めごちゃんもごめんなさい。会った途端に、こんな話…」
「…」
…「気にしないでください」と、言ってあげたかった。本当は。だって、これは珠理とサユリさんの問題だから。
…家族の話だから。
…でも、やっぱり、今出されていることは、そんな風に言えないくらい、大きなもので。
素直に、サユリさんの方を向けない。
「…でも、今すぐじゃなくていいの。例えば、3年生になってからとかでも。そこから1年、わたしと過ごしてくれればそれでいいから…」
「だから、その1年でも、めごを1人にさせてしまうのがアタシは嫌なのよ」
「…1年でも?」
「1年でも。めごが不安になるようなことはしたくない」
「…」
…珠理の気持ちが、次々と、心に染み渡っていく。
珠理は、こんな時にも、わたしのことを考えてくれているんだ。
こんなにも、想ってくれるんだ。
たとえ、自分のお母さんの願いだとしても。



