ヒミツにふれて、ふれさせて。



「珠理、めごちゃん。会えてものすごく嬉しいんだけど、今日はちょっとお話がしたくて来たの。楽しいところ申し訳ないんだけど、ちょっと時間とれるかな」

「え…?」

「…」


玄関の先で、目を伏せながら、サユリさんは笑った。でも、眉毛だけは下がっている。
…この表情も、珠理とそっくり。少しだけ困った時にする顔。


「なあに、話って。アタシそんなの聞いてないんだけど?」

「ごめんなさい、重要な話なの。雄介も呼んでるから、ちょっとだけ、話したい」

「…」


…雄介とは、オジサンの名前らしい。



珠理とわたしは、玄関の近くにある外の席に呼ばれた。以前、リョウちゃんと別れた後に、オジサンと話していた席だ。オジサンやバイト生が使っている、隠された場所。


そこに、珠理とわたし、サユリさん、そして仕事の合間を見て戻ってきたオジサンが座る。
珠理とわたしは隣同士。オジサンとサユリが向かい側に座る。



「…それで、なあに?話って」


小さくなって座ったサユリさん。その隣で、少し考え込んでいるような顔をしているオジサン。
どんな話をされるんだろうと、ドキドキしている、わたし。

そんな空気の中、珠理が強めに発言すると、サユリさんの肩がピクリと動いた。


…でも、わたしは見逃さなかった。その時の、サユリさんの少し不安そうな表情を。



「…あのね。突然の話で本当に、本当に申し訳ないんだけど…、単刀直入に言うとね」

「……」





「——— 珠理と、一緒にアメリカに帰りたいと思ってる」





「——…え?」

「…」



…目の前が、一瞬真っ暗になった。


それくらい、サユリさんの静かに発した言葉が、信じられなくて。

でも、衝撃は、確かに強くて。



「…うそ……」


思わず、気持ちがこぼれてしまう。




「…何を、言ってるの?まだ再会して15分程度なんだけど。突然すぎるのも度が過ぎてるわよ」

「…うん、分かってる。でも、もったいぶっても仕方ないと思って。あまり、時間もないし…」

「……」


……流れる沈黙。


初めて会ったこの人に、告げられた言葉。




それは、わたしにとって、あまりにも受け入れがたいこと。