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しばらく、ベッドの上で2人で転がって、他愛もない話をしていた時に、待っていた出来事は起こった。
いつその時が来るかなんて、わたしも珠理も知らなかった。もしかしたらオジサンだって、知らされていなかったのかもしれない。
急に鳴り響いたインターフォンに、硬直したのは珠理の身体だけじゃない。
だって珠理の話だと、毎年お店の方に来ていたらしいから。
だから、珠理と2人の時間を過ごしている時に、突然やってくるなんてことは予想もしていなかった。
—— ピンポーン
「………」
…インターフォンが鳴り響くのは、2回目だ。
「……、珠理」
「めごは、ここで待ってて」
「…っ」
…まだ、誰が来たかなんて、分からないはずなのに。
珠理が真剣な顔をするものだから、急に不安が押し寄せてくる。
「…っ、珠理」
思わず、部屋を出て行こうとする珠理の手を握った。
…大丈夫だよね、珠理。何も、こわいことなんてないよね。
「…めごも、一緒に行く?」
「えっ…」
「いーよ。不安なら、アタシと一緒にいなさい」
「…っ」
何とも言い難い感情。こわいとか、不安とか、緊張とか、そういうものが大きく渦巻いて、思わずギュッと手に力が入る。
トン、トンと階段を少しずつ降りていって、そのまま玄関に向かう。リビングにモニターがあるはずなのに、珠理はそれも見ようとしなかった。
そして、木で出来た重たい扉を、そのまま押して。
…ドアを、開く。
「…はい、美濃です」
緊張が一気に走った。足先から心臓まで、ジンと電気が走ってくるみたいに。
珠理がドアを開ける瞬間には、目を閉じてしまった。好奇心で見ることなんて、できなかった。
…だって、そこには。
珠理のお母さんが…。サユリさんが…。
「———珠理、久しぶり」
…珠理にそっくりの、きれいな女の人が、立っていたから。



