頰を伝う涙。でも、それよりも先に、手が動いて、何度もその味を味わった。
「…う、おいしい…。おいしい〜…っ」
「めご…」
あの時と、まったく同じ味。ほんとうに、ぜんぶ同じなの。
流れたのは、数年の月日だけ。
でも、あの時の珠理はきっと必死だったんだと、くるしかったんだと思うと、何とも言えない気持ちが込み上げてくるよ。
…珠理、あの時、こんな風に直接伝えられなくて、ごめんね。
「…また、食べられるなんて、思ってなかったっ…」
「……よかった。…ちゃんと、おいしい?」
「おいしい……!やっぱり世界一、だいすきな味だよ…!」
きっとまた、ブサイクな顔をしているんだろうなあって、思っているよ。
でも、すごく嬉しくて、それどころじゃなかったの。
「ありがとう、珠理。わたしのために準備してくれて。ありがとう…!」
「…」
また、あなたのかけらに触れられたことが、嬉しいんだ。
ずっと味わっていたくて、もう一度ケーキに手を伸ばした。
もう何口目だろう…なんて思いつつも、美味しいんだから仕方ない。
でも、フォークでそれを切っていると、フリーになっている左手を掴まれた。
「……珠理…?」
そしてそのまま、何も言うことなく、珠理はわたしの手首に唇を這わせながら、フォークを持っていた方の手も掴んでいた。
ドキッと心臓が動く。さっきまで笑っていた珠理は、真面目な顔をしながら、頰やまぶたにキスを落としていく。
「…ちょ、珠理…? まだ、食べてる途中……」
「いい。それよりこっち」
「!?」
フワッと、身体が浮いたのかと思うと、そのまま後ろにあったベッドに座らされる。
ギッと軋む音を響かせながら、珠理も同じように登って、そのままキスを続けていた。



