オシャレなガラスで出来たお皿の上には、大きなケーキ。純白で、上には細工がされた飾りが載せられていて。
…なんだか、懐かしい気持ちに包まれる。
「………こ、れって……」
丸いところは、見たことがない。だって、わたしが見たのは、もう切られてある状態だったから。
…でも。
「…これ…、珠理の、レアチーズケーキ…?」
ハッキリと、頭の奥に残っていた記憶が、そうだって言ってる。レモンの皮で出来たかわいい飾り。それを支えている、きれいな真っ白いケーキ。
…数年ぶりに見た。涙が出そうになった。
「…めごが、ずっと食べたいって言ってたから。いつか、めごだけのために作ろうって思って、急いでレシピ探したの」
「珠理…」
「…食べてみて。めごだけのケーキだから、そのまま」
「…っ」
差し出されたフォーク。ハニーブロッサムのお店で使っているものだ。ケーキを入れるお皿もそうだった。
全部全部、あの日のままで、珠理は準備してくれていたんだ。
…全部、わたしのために。
おそるおそる、ケーキを切って、ひとくちぶんを口に運ぶ。
当時はこんなに緊張しなかったのに、不思議。何気なく口に運んだのに、不思議。
今は、とっても緊張する。
フォークごと口で覆って、ぎゅっと閉じた。フォークを抜き取って舌を動かすと、それはもう、とっても懐かしい味が、広がっていく。
…そうだ、この味。この味だったの。
「…どう? ちゃんと再現できてる?」
「……っ」
…色々と、聞いたあとだから、分かる。
このケーキに、どれだけの想いが込められているのか。
珠理が、どんな気持ちで、このケーキを作っていたのか。
「…っ」
甘酸っぱい味が広がる。濃厚なのに、舌にしつこく絡みつかない、サラッとした味わい。
レモンの香りが効いていて、やさしい甘さ。シンプルなのに、とてつもなく美味しいの。
…ううん、おいしいなんて言葉じゃ、表せられないくらい。
…でも。
「……っ、おいし………っ」
ずっと、食べたい食べたいって、思っていたからかな。それとも、このケーキが作られた意味を、知っちゃったからかな。
それとも、もっと、ほかに理由があるからなのかな。
「…めご…?」
「…っ、ごめ……」
泣きたいわけじゃないのに、自然と涙が溢れてくるんだよ。



