「はーい、なあに?」


もう、これから出るって時なのに、何だろう。


「あら、なんだかおめかししてると思ったら。やっぱりお出かけするのね?」


…う。見られていた。別にこそこそやっていたわけじゃないけど、なんとなく伝えるのは気が引けたから黙っていたのに。


「うん…。なんで?」

「ううん〜、なんでも。ただ、下にとっってもカッコイイ男の子が来てるから、もしかしてめごの彼氏かな?って♡」

「…」


……え!?


にやにやと、ドアから顔を出すお母さん。下に来てる男の子って、もしかしなくても、珠理…?

あわててスマホを取り出して画面を確認すると、すぐに『着いたわよ♡』と書かれてあるのが目に入る。
ウソ…まじか…。着くの早すぎだよ…。


「ねえねえ、めご。彼氏?そうでしょう?」

「…」


あー…めんどくさい。リョウちゃんと別れたことさえも知らないはずなのに、そこは気にしないのかな、この人。それとも、全部気づいてる…?


「ねぇ、お母さんにも紹介しなさいよ。せっかく来てるんだから」

「……いーけど、あの人ちょっと変わってる人なんだよ…。お母さんきっとビックリすると思うよ…いいの?」


…まさか、あの外見でオネェ系男子ですなんて、誰が予想するだろうか。絶対そんなこと、思わないよね。

それに、珠理がOKしてくれるかどうかも怪しい。


それでも、お母さんは引き下がらずに、

「今の世の中、いろんな人がいるじゃない。めごのこと大切にしてくれる人なら、お母さんは大歓迎よ」


…なーんて、言っていた。


「…はあ、分かったよ…」


とりあえず、珠理が嫌がるのは嫌だと思い、メッセージでお母さんのことを送った。すぐに既読はついて、『アタシなんかでよければ♡』なんて返信が返ってくる。


…てか、そのキャラでいくのかな…。それとも、たまーに見せる、男の子の顔…?

直前なのに、まるで想像ができない。