「…っちょっ…、ここ外…っ」
信じられない!と今度こそ抗議をして離れると、珠理は少し意地悪そうな顔をして、「誰もいないじゃない」と笑った。
人がいるとかいないとか、そーいうの関係ないからな!
ほんと、油断も隙もないオネェだ。
「めごが、朝っぱらからそんな可愛いこと言うのが悪いんだろ」
「はあっ!?そんなこと言ってないし!」
「言った。もうほんと、無自覚なんて困った子だわ。次そんなこと言ったらあんなキスじゃ終わってやんないわよ」
「なっ…、何言ってるの…!?」
「何って…。アタシも一応男なんだから、いずれはしたいわよ、めごと…」
「あ———!もうそれ以上言わなくていいから!」
もー、この救いようのない変態!!
朝っぱらからそーいう刺激的な話はやめてもらいたい。やっぱり会いたいなんて言うんじゃなかったかもしれない。
わたしが間違っていた、絶対。昨日の夜に戻りたい。
このふざけた浮かれオネェの口を塞いであげたいけど、わたしの左手は背の高い珠理に届くわけなんてなく、代わりにその大きな手に包まれてしまった。
…朝から完敗だ。悔しすぎる。
「何照れてんのよ。可愛いわね」
「うるっさい。珠理のばか!」
「はいはい。あ〜今日も可愛い」
隣で顔を塞いで震えている意味不明の変態オネェ野郎に、ため息が出た。
「…あ、そうだ、めご」
冬の、冷たくて澄んだ空気が、熱くなっているわたしの頰を冷やしてくれる。
それを隠すように、繋がれた手をじっと見つめていたわたしに、珠理は思い出したように言った。
「…今日のお昼、2人で食べたい。ちょっと、話したいことあって」
困ったような、笑顔。
その顔を見た瞬間に、わたしの身体は、心よりも先に、何かを感じ取っていた。



