そしたら珠理は、一瞬少しだけびっくりしたような顔をした後、ははっと乾いた笑い声を出す。
あまり人通りがない道で立ち止まって、そのままわたしの頭を撫でる。
「いーの。アタシが会いたくて来てるんだから。そーいう申し訳ない顔をしない」
「…っ」
「わかった?」と、わたしの冷たくなった髪をやさしく撫でながら、また珠理は笑った。
「アタシは、アンタが昨日少しだけ元気なかったのが気になってただけよ。だって突然会いたいとか言うんだもの。そんなこと、普段のめごだったら言わないじゃない。だから、ちょっと心配になっちゃって」
頰を、ふにっとつままれる。大きな手のひらは、いつものようにわたしの耳や頰をくすぐって、愛おしそうにわたしに触れる。
…でも、違うよ珠理。わたしは…。
「…元気でも、元気じゃなくても、珠理には会いたい…よ…」
朝早くからわたしのために駆けつけてくれた珠理に、喜ぶようなことを言ってあげたかったけど、どうしても恥ずかしい。
こんなこと言うなんて、確かにわたしらしくない。語尾がへにょへにょと、力を失って行く。
どうしてこうも、気持ちを伝えるのがわたしは下手なんだろう。
「…朝から煽るわね、アンタ」
「え?」
恥ずかしくて、下を向いていたら、上から降りかかってくる声。その声に導かれるように上を向くと、そのまま何か温かいものが触れた。
「…っ」
それが、珠理のくちびるだってことに気づくのに、数秒時間がかかった。
「ちょ…っ、しゅ…、んっ」
一瞬だけ離れて、その間に抗議をしようとしたら、また角度を変えて塞がれた。表面は冷たいのに中は熱いそれに、食むようにキスをされて。
頭は、朝から大変なことになっていく。



