「…うん、ありがとう」
珠理の声を聞いたら、少しだけ落ち着いた。やっぱり、直接話す方が安心する。珠理のやさしさを表情とか声とか体温とか、直接与えてもらう方が、わたしは好きだ。
『朝一番にめごに会えるとか、しあわせな1日になりそう。楽しみにしてる』
「うん、わたしも」
本当は、今すぐ家を飛び出してハニーブロッサムまで走って行きたいって、少しだけ思ってるけど。
でも、珠理がそうやってわたしのために行動してくれるって分かったから、それだけで十分。
「ねぇ、珠理」
『うん?』
「…あのね、もし珠理が少しでも嫌だと思ったら、はっきり言って欲しいんだけど」
『うん、なあに?』
…少しずつ、少しずつ、わたしもこの人のことを知っていかなきゃいけないなって、思ってる。
「…っ、声とか…聴きたくなったら、こうやって電話しても、いいかな…」
…何を聴いてるんだろうと、思った。今まで彼氏にこんなこと聞いたことなんてなかった気がする。
リョウちゃんには、後半はこわくて聞けなかったし。わたしからは連絡しないことの方が、多かったから。
…でも、これからはちゃんと、向き合っていきたいって思ってるから。
珠理はしばらく黙っていたけれど、数秒後には、『はぁ〜〜…』と、長いため息をこぼしていた。
少しだけ呆れられちゃったのかと、どくんと心臓が動いて怖くなったけれど、すぐに珠理は誤解を解いてくれて。
『…許可なんて、いらねーよ』
小さく笑いながら、そう言ってくれた。
やっぱり、やさしい声だった。
『なんだよ、ほんといきなりそーいうこと言うのやめて。心臓壊れる』
「えっ…、ごめん…」
『ウソ。嬉しいからもっと言って』
「…っ」
甘い、甘い声。
それがわたしの耳から溶け出して、全身を包む。



