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学校に着くと、わたしの机で瀬名と茶々ちゃんが待ち構えているのが目に入った。

いつもより少しだけ遅刻して行った。だから、今日は2人の方が早かったのか。

わたしが登校したのが見えた途端、にやにやと目元をあげる2人。可愛い顔が、なんだか気持ち悪いオバさん顔に変身していた。


「おはよう、めご」

「今日、遅かったじゃない?」

「…」


くっ。昨日、瀬名の方には一応メッセージ入れて置いたんだけどな。「ちゃんと言えた」って。それだけじゃ、納得してもらえなかったのか。


「…う、おはよう…」


鞄を肩から下ろして、朝陽が当たって暖かくなっている机に座る。
そうこうしている間にも、2人は近くの、まだ登校していない人たちの椅子を引っ張り出してきて、わたしの両隣を確保した。


「ねえねえ、めごさん」

「あんたねぇ、あたしたちに何か報告しなきゃいけないこと、ないわけ?」

「…」


…あぁ。もう逃げられない。降伏だ。


「…ご、ご迷惑とご心配をおかけしました」


なぜか、敬語が出てくる。冷や汗もダラダラだ。


「はあ?それだけ?そんなわけないわよね。あたしたちが何を求めてるのかって、分からないわけじゃないわよね、めご」

「う…」


茶々ちゃんの女王様モード発動だ。これに逆らったら焼かれても食われても文句は言えないよ。


「ねぇ、めご。ミノくんとはどうなったの?
ちゃんと、伝えられたの? うまくいった?」


瀬名が、首を傾げながらわたしを見た。

…ずっと、心配してくれていた人。わたしに、何かあったら戻っておいでと、背中を押してくれた人。

珠理への想いに、気づかせてくれた人。


キラキラと、期待を込めて光っている4つの目に、わたしはまだ少し逃げ出したい気持ちになったけれど。

素直に、小さくうなずいた。