「いいよいいよ。ちょうど俺も帰ろうとしてたところだからさ。めごちゃんは、温まってから帰った方がいいよ」
「えっ…、でも」
「汗もかいてるじゃん。この状態で外出たら、冷えちゃって風邪引くよ」
ブレザーを羽織って、マフラーを巻いて、そそくさと帰る準備をする近海くん。
わたしが来てしまったから…帰ろうとしてくれているんだよね。うう、申し訳ない。
「…ご、ごめん近海くん。わたし本当に長い話しに来たわけじゃないから…、あの、まだ全然いて大丈夫だよ…!?」
何か、大事な話とかしていたんじゃないだろうか。ちゃ…茶々ちゃんとの話とか。でも、そんなの絶対に聞けない。
どうしたらいいかオロオロしてしまっていたら、近海くんは吹き出して笑った。
「ははは…っ、いや、本当にもう用事は終わったからいいの。な、珠理」
「………」
本当…? 珠理は黙ったままだけど、大丈夫なのかな。本当に、無理してないのかな。
「な、何かしてたの…?」
思わず、珠理に聞いた。珠理は、うーんと困ったような顔をしていたから、聞いたことに少し後悔してしまったけれど。
「ふふ、“男会議” だよ、めごちゃん」
代わりに、玄関に立った近海くんが、耳打ちで教えてくれた。
おとこ かいぎ…?
近海くんと、オネェの珠理が…?
「ちょっと。めごにそんなに近づかないでっていつもいつも言ってるでしょ」
ハッとしたら、珠理がわたしの近くまで来ていた近海くんをベロリと剥がしているのが見えた。
…また、過保護オネェが発動されている。
「あー、はいはい、ごめんって。なんかもう、すげー面倒なことになりそうだから、そうなる前に帰るね。めごちゃん」
「あ……っ、うん…!ありがとう…!」
“バイバイ” と、陽気に手を振っている近海くんは、寒い夜の道を歩いて行った。
それをある程度見送って、手を振り続けて。
近海くんの姿が玄関から見えなくなると、
「…めご、あがって」
珠理は、木のドアをバタンと閉めて、言った。



