「えっ!?めごも、あぁいうのされたいとか思うの!?アタシ、全然やってあげるのにっ!!」

「…」


腕まくりをして、細い白い手首を出す珠理。顔だけは本気だ。


「はぁ。そーいうのじゃないんだよ、珠理。分かってないね」

「ええっ!?」


目を細くして珠理の方を見ると、隣で、がっくりと項垂れる。その小さくなった姿が、おもしろくて。


「…ふふ…っ。あはは…っ」


笑っちゃう。ほんとに、おもしろい人。


「なに笑ってんのよう…」

「…ううん、何でもない。それよりほら、早くトマトリゾット作っちゃお」

「うんうん、そうだねぇ」


珠理の手を、引いた。温かいリビングに引っ張って行くと、左手首からブルートパーズが顔を出す。

思わず、それをじっと見てしまって、珠理の顔を覗く。すると、珠理とも目があって、また笑った。


ほんわか、のんびりの珠理の誕生日。

楽しかった時間を、わたしたちは過ごしていた。









『———…留守番電話サービスに、接続します…』







…1件の、ある大きな事件が、すぐに起ころうとしていることも、知らずに。