“めご” なんて名前、珍しいから、わたし以外で同じ名前を聞いたことがない。
…そして、その声はまるで、他の音に混じっても、耳が敏感に感じ取ったような、そんな気がしたから。
思わず、振り返る。
少しだけ息が上がっていたそれを、わたしの耳が、頭が、心が、覚えていて。
「……リョウちゃん」
わたしも、思わず呼び返した。
久しぶりに見た、制服を着たリョウちゃん。
…そっか、今日は月曜日だから、部活がお休みで…。この辺りに住んでいるのだから、会ってもおかしくないよね。
「…久しぶり、めご」
駆け寄ってくる、彼。その姿は、わたしが知っている姿とは、少しだけ雰囲気が変わっていて、何だかスッキリした表情をしていたように思う。
…そんな、リョウちゃんの姿を見て、どうしてもすぐに立ち去ることはできなくて、
「…ごめん、後から合流する!」
…と、少し離れたところに立っていた、みんなに向かって叫んだ。
わたしの事情を知っているみんなが、少し心配そうな顔をしていたけれど、きっと、たぶん、大丈夫。
「…めご、ごめん。友だちといたんだ」
「ううん、大丈夫。それより…久しぶりだね」
「…ん」
少しだけ気まずそうに、首の後ろをかいているリョウちゃん。呼び止められて、思わず残ってしまったけれど…。どうしよう、この状況。
「あ…っと、ごめん。呼び止めたのは、ワケがあって」
久しぶりに、近くで聞く声。少し前までは、あんなに聞き慣れていたのに、変な感じだ。
「この間、部屋を片付けてたら、めごのものがいくつか出て来ちゃって。でも、お前の私物だし、捨てられなくて…。スマホからそのうち連絡しようとは思ってたんだけどさ」
「あー…」
…そうだ。リョウちゃんの家にたくさん私物を置いていたの、忘れてた。ほとんどが漫画とかCDとかだけど。
別れるとなると、こんなことまで考えなきゃいけなかったのか。知らなかった。



