「これからお昼なのっ?じゃあ一緒に食べましょうよ。ねぇ、瀬名ちゃん?」

「いや、うん、わたしはどっちでも」


…いやいや瀬名、そこは即断ってくれよ頼むから。


「わたしはここで食べる。美濃珠理はいつもの取り巻きと食べればいいでしょう」


美濃珠理は、うちの学校ではとにかく目立っている。わたしも生まれてこのかた、ここまでの美青年は見たことがないと思うくらいだから、その輝きは相当なもの。

そのうえこの女子力マックスな対応。自然と女の子たちは美濃珠理の周りに集まっていく。

そして、この明るさだから、男友達も何人かはいるようだし。

…なんかもう、そういうの全部、今まで平穏に暮らしてたわたしにとっては、非日常極まりないものなのだ。



「…いつもの取り巻きって。だってアタシ、今日はめごと食べてくるわって言って来ちゃったんだもの」

「なんでそう、わたしの許可もとらずに勝手に行動するわけ…」


何もかも、よく分からない生物だ。

まぁ、あの日からまだ2週間ほど。美濃珠理にとっては、わたしは少し面白い暇つぶし程度にしか見られていないのかもしれないし。

飽きたら、もう来なくなるかもしれないし。別に今だけ耐えればいいのなら全然まだマシだけど。

…ていうか、なんでわたし?

別にそんなに追いかけるほど、面白い人間じゃないでしょう。

この間の腹痛の時、助けてくれたのは感謝してるけど。でも、やっぱり非日常は慣れないからムズムズする。




「あー、珠理。お前ここにいたのかよ」


教室がまた少しザワッとする。何事かと思ったら、目の前の美濃珠理が「アッ!」と声をあげた。

少しずつ近づいてくる影に、わたしも思わず顔を上げる。