揺れる木々の中。わたしは、茶々ちゃんに手を取られてそのまま裏庭まで到着した。足を止めた途端、目の前のツインテール美少女はわたしの方を振り返って、鬼のような顔をつくる。

「あんたねぇ、何あんな奴らに言い負かされてんのよ!ほんっと、ハッキリしないダラシない女よね!」

「…は、はぁ…」


今日もすごい迫力すぎて、さすがです茶々様…。って、そうじゃなくて。


「ごめん、ありがとう…。助かった」


珠理と土曜日デートをして、2、3日経ったくらいからこんなだったから、ちょっとスッキリした。もう1週間くらい続いてたから。

第一、女子からの嫉妬なんて、今まで受けたことなかったし。


「あんな奴らに目の敵にされちゃって。このこと珠理は知ってるの?」

「ううん…言ってない…」

「はぁ〜!?だって珠理が絡んでるんでしょう!?正直迷惑だって言っていいんじゃないの、いくら珠理相手でもさあ!」


大きな溜め息をつきながら、茶々ちゃんは項垂れていた。
確かに、珠理も絡んでいることだから、話してもいいのかもしれない。でも話したらきっと、珠理はわたしに謝るんだろうな。

…そう思うと、なんとなく、気が引けて。


「い、いいの…。半分はわたしのせいだし、それに…あの子たちの言い分も分からないでは、ないから…」


もう一度、左手の桜貝に触れた。

これを貰った時、わたしは確かに嬉しかった。珠理と出かけたこと、ものすごくいい思い出になったし。

…好きだって、言われたことも、まだちゃんと覚えてる。


だから、女の子にあんな風に言われていることを珠理が知って、「あんなこと、やめておけばよかった」って思うのは嫌だ。


そんな風に思いながら、お守りのようになっている桜貝を触っているわたしを見て、茶々ちゃんはハッとしたような顔になった。